のでございますから」
「なあに、名誉の負傷でもなんでもありゃしませんよ」
と竜之助が、苦笑いしました。
「いいえ、名誉です、十津川の一戦は勤王の火蓋《ひぶた》でした、あなたがその名誉ある一戦に加わって、犠牲の負傷を残されたということは、大きなる誉《ほま》れでなくて何でしょう」
と北原が言いました。
「それは本当に勤王心があって、やった事なら名誉かも知れないが、拙者のは出たとこ勝負で、首を突っこんだだけです」
と竜之助が、軽くさばくのを、北原がつり込まれて、
「何事でもです、幕府を敵として孤軍報国のあの義戦に加わろうというのは、赤心鉄腸を備えた勇士でなければできないことです」
 北原賢次がムキになると、竜之助はツンと少しばかり天井を上に向いて、何か言いそうで言いませんでした。
 そこで北原だけに、ハズミがついて、それをキッカケに、しきりに十津川戦陣の物語に鎌をかけて、この勇士に当時実戦の景況を物語らせ、その名誉の負傷のよって来《きた》るところを詳《つまびら》かにさせたいものだと、鎌だけではないモーションをかけてみたりしたが、一向に手答えがありません。
 そこまでは、お雪ちゃんもハラハラす
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