たと、お雪は傍から、やっと胸を撫で下ろしていると、その頼みきった北原が、案外に気色《けしき》ばんできました。
「え、大和の十津川ですって……」
「そうです」
「あなたがなんですか、大和の十津川のあの天誅組《てんちゅうぐみ》の騒動へ加入なすったのですか」
「え、ふとした縁でね」
「ははあ。それはそれとして、十津川ではどちら[#「どちら」に傍点]へお附きになりました、勤王勢《きんのうぜい》でございましたか、それとも幕府方でございましたか」
「どちらというわけもないんですがね、途中で、十津川行の浪士たちに逢いましてね、それにすすめられたものですから、ついその気になったまでです」
「それでは勤王方でございましたね」
 北原賢次は、なんとなく我が意を得たとばかり、膝を進めました。
「なんでも中山侍従殿というのを大将にして、事をあげるにはあげたが、数の相違で敗《やぶ》れて、拙者も十余名の同志と紀州路へ落ちて行く途中、猟師の奴に爆弾をしかけられて、こんなことになってしまいました」
「あ、そうでしたか、それはどうもはや、左様な名誉の御負傷とは存じませんでした、なみたいていの御病人だとばかり思っていたも
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