乗ると、
「あら北原さん――どうぞ」
とは言ったけれど、その狼狽ぶりは、障子一重の外で鮮かに手に取るほどなのが、来客の心を少しく不審がらせました。
よし、自分たちが不意に押しかけて来たからとて、そんなに狼狽しなくてもよかりそうなものを、ことに、ちゃんと前ぶれもしてあるようなもの。
そこで、お雪は何か、あわてて身の廻りを始末するような物音を立ててから、
「どうぞ」
「お忙がしいんじゃないですか」
あんまり、中があわただしい気配《けはい》だものですから、北原も遠慮してみると、
「いいえ、かまいませんのです、どうぞ」
「失礼してもよろしうございますか」
「どうぞ」
障子があけられて見ると、お雪ちゃんが少しポッと赤くなって、そのあたりには、縫物だの、書き物だのが取散らしてあったので、それでは、その取散らかしを気兼ねをして狼狽したのだろうと思われます。
「御勉強のようですね」
「いいえ、何もしていやしませんの」
「御病人は……」
といって、北原が、二間打抜きの源氏香の隣りの間を、そっと見ると、屏風《びょうぶ》を後ろにして、炬燵《こたつ》を前につっぷしている一人の人を認めました。
「有難う
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