いますならば、いつまでもお待ち申しておりましょう、数ある人間のうちで、行方定めぬやせ法師のわたくしを、特に見込んでお呼び止め下さるあなた様に、浅からぬ御縁を感じますものですから、静かにこうしてお待ち申し上げます故、お急ぎなくお越し下されませ、白骨の道は険しうございます――決してお急ぎには及びません、わたくしを雪の中に待たせて置いて、というお気兼ねは御無用にあそばしませ。今のわたくしは引返して、そちらまであなた様をお迎えに出る力こそござりませぬ、止まってお待ち申し上げるぶんには、いつまででも、日が暮れましても、夜が明けましても、月が終りましても、年が経ちましても、一生の間でも、ここにこうしてお待ち申しておりまする」



底本:「大菩薩峠11」ちくま文庫、筑摩書房
   1996(平成8)年5月23日第1刷発行
   「大菩薩峠12」ちくま文庫、筑摩書房
   1996(平成8)年5月23日第1刷発行
底本の親本:「大菩薩峠 七」筑摩書房
   1976(昭和51)年6月20日初版発行
※底本では、「…人前出で難きほどの体《てい》成り候はば」の後に、改行が入っています。
※疑問点の確認にあたっては、「中里介山全集第七巻」筑摩書房、1971(昭和46)年2月25日発行を参照しました。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:原田頌子
2004年1月9日作成
青空文庫作成ファイル:
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