この駒井にさえも、どうしていいか、さばきのつかぬこの差当っての大難関を、ポッと出の田舎者《いなかもの》のくせに、身に引受けてみようとは、なんという豪胆な言い分だろう、豪胆でなければ、向う見ずの極だ。
そこで駒井が、七兵衛に向って言いました、
「ふん、お前に何ぞよい知恵がありますか」
「はい、知恵というわけではございませんが、お殿様が私にお任せ下さりますならば、一番あいつらの鼻ッ端をくじいてやりたいと存じます。としましても、ポッと出の私一人の力で土地っ子の大親分とその一まきを相手に、正面から喧嘩が買えるものではございません。そうかといって、長い間たくらんでした仕事を扱いにはなりますまい。元はといえばそのマドロスさんとやらいうお人一人のこと。そこでそのマドロスさんを、あいつらの手にかけない先に、こっちの手でなくしてしまえば、向うは拍子抜けがしてしまい、また言いがかりの種子《たね》も無くなってしまう道理でございますから、こいつは一番先手に廻って、こっちの手で、あのマドロスさんとやらを無い者にしてしまったらいかがのものでございましょう。無い者にすると言いましても、決して生かしたり殺したりするのではございません、早い話が、今夜のうちにあのマドロスさんを盗み出してしまうんですね。盗み出して、だあれも気のつかないところへ隠して置くんでございますね。そうすりゃ、あいつらの意気組みも拍子抜けがしてしまいましょう。それから後は、それから後で、またうまくあやなす法もあろうというものです。いかがでしょう、この謀《はかりごと》は」
七兵衛に斯様《かよう》に建議をされたが、駒井甚三郎は、膝を打ってなるほどともなんとも言わない。深く考え込んだ後、
「ふん、それは最もよい計略かもしれないが、また最も行い難い仕事だ、第一、それらの無頼漢が覚悟の上で護る根拠地へ、今晩のうちに出向いて行って、それを首尾よく盗み出して来るほどの働き者がこの際、あるか、ないか、それを考えて見給え」
と駒井から、重々しく戒めるように言われたのを七兵衛は、軽く受け、
「はい、そこでございます、そこのところをひとつ、この七兵衛にお任せを願われないものでございましょうか、仕遂げた上でなければ口幅ったいことは申し上げられませんが、ともかくこの七兵衛にお任せ下されば、やれるだけはやってお目にかけようと存じます」
「うむ、お前の勇気
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