し者の片割れだ、そのくらいにしてやったって、賞《ほ》められこそすれ、トガメが来るものか。
 明日はやっつけてやれ、と、こんなことを、あの賭博打《ばくちうち》の子分共が口々に言っておりました。
 だが殿様、どう御処分なさいますか、ここは充分考えどころでございますよ……」
と七兵衛が、ここまで語り来《きた》って駒井の様子を窺《うかが》うと、駒井の面《おもて》に、言わん方なき苦悶《くもん》の色が表われたのは事実です。
 ほとんど、どうしようとの思案と、返辞とに窮してしまったらしい。マドロスを取返しにこちらから押しかければ、いわゆるなぐり込み[#「なぐり込み」に傍点]だ、いかに腹が立てばとて、駒井能登守ともあろうものが、天保水滸伝の向うを張って、博徒を相手のなぐり込みが、できるものか、できないものか。
 だがまた、これをそのままにして置けば、みすみす頼りない外国の漂浪者を、無残なる私刑者の手に、見殺しにしなければならない、これをしもまた忍び得ることかどうか。
 これを忍んでいれば、その次には大挙して、この陣屋と、造船所とを襲うに相違ない。たかの知れた博徒共を追払うは何のことはないとしても、彼等に口実を与えた以上は、ここに落着いて事業の進行は覚束ない。まかり間違えば、吾々一同の生命の危害の問題だ。
 ああ、これは自分の思案に余るワイと、さすがの駒井甚三郎の面に、苦悶の色のいよいよ濃くなるのを隠すことができません。
 それを見て七兵衛が、静かに膝を進ませて言いました、
「殿様、御心配なさいますな、向うはたかのしれた賭博打《ばくちうち》でございます、あれを駒井の殿様が、まともにお考えになっては困ります、まして、まともにお相手になった日には、あいつらと、その黒幕にいる人たちの思う壺でございます。
 こんなのにはやっぱり裏をかいてやらなければなりません、いかがでございましょう、出過ぎた申し分でございますが、こうして参り合わせるも何かの御縁、この七兵衛にひとつ、お任せ下さいませんでしょうか」
と言われて、駒井が、苦悶の面をパッとあげて、改めて、七兵衛の頭から足の先までを見直しました。
 今までは、単純なお使役の青梅在のお百姓とばかりあしらっていたこの男としては、意外千万な、大胆不敵の申し分である。
 第一、これだけの報告を、いつ、どうして聞き出したかさえ大きな疑問であるのに、不肖ながら
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