まり、つきつけられた米友の面《かお》を見まいとして、両手で自分の面をかくします。
「ところが、生きてるんだよ、この通り、生きてるんだ、間違いはねえのですからね、よっちゃん、そんなに、むずからねえでもいいや、正《しょう》の米友だよ」
「いいえ、わたしの知ってる米友さんは、たしかに死にました」
「ちぇッ、だって、当人がここにいて、生きていると言ってるじゃねえか」
「そんなはずはありません、友さんは死んじゃったのです、お前さんは別の人か、そうでなければ、米友さんの幽霊に違いありません」
「ちぇッ――別の人がおいら[#「おいら」に傍点]だなんて言うかい、ニセモノをこしらえたって、ニセモノ栄《ば》えがしねえじゃねえか」
「放して下さい――怖いから」
 これはホンの一瞬時の出来事でしたが、この辺に至って第三者が承知しません。
 第三者は皆、米友を以て、兇暴性を帯びた色きちがいかなんぞと勘違いをしていないものはない。娘を引離すより先に、米友を手ごめにかかりました。
 その時、米友の頭脳《あたま》にハッとひらめくものがあったのは
「よっちゃん、お前、ほんとうにおいらが死んでると思ってるのかい。そうだそうだ、それも無理は無《ね》え、それから後のことをお前は知らねえのだ。おいらは助かったんだよ、尾上山《おべやま》から突き落されて、一旦は死んだが、助ける人があって、息を吹き返したんだぜ。それをお前は、本当に死んだものと思いこんでいるんだろう。助かったんだよ、助かって、そうして今まで生きていたんだ、今まで生きているうちには、ずいぶん辛《つら》いこともあらあ――」
 この弁明が、意外に利《き》いたらしいので、娘が面を上げ、
「ほんとう――」
「ほんとうだとも、話せば長いけれど、盗みもしねえのに、盗人《ぬすっと》だなんて人違いでお処刑《しおき》に逢って、ほら、尾上山の上から突き落されたには落されたけれど、人に助けられちまったんだ。その人というのは、ほら、お前も知ってるだろう、船大工の与兵衛さんと、お医者の道庵先生でね、その先生のおともをして、おいらは昨日、こっちにやって来たばかりなんだ」
「ほんとうなの、友さん」
「ほんとうだよ、ほら、幽霊じゃねえや、足があるだろう」
 そこで、米友は、また二三度飛び上って、足のあることの証明をして見せました。
 娘は笑いませんでした。笑わないけど、恐怖は早く
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