あの毛唐人の仲間らしいよ」
二騎|轡《くつわ》を並べてこの場へ来合わせたのが、駒井甚三郎と田山白雲です。
こんな面ぶれが相前後して、こんなところへ事々しく集まって来たという理由は、ふとした聞きかけが最初でありました。
これより先、駒井甚三郎が、このたびの造船に当って、何物よりも苦心しているのは、蒸気機関の製造であったことは、前に申した通りです。
他の部分は、ほとんど完全に設計が出来、順調に工事も進行し、大砲の据附《すえつ》けでさえが、駒井の知識と、技能を以て、立派に完成の見込みがついたのにかかわらず、蒸気機関だけは苦心惨憺を重ねて、未《いま》だその曙光を見ないという有様であります。
これは、その当時の日本としては、全く不可能のことであり、駒井が不可能ならば、無論、日本の国のどこへ持って行っても、可能のはずがないことは、何人よりも、当人自身が熟知しているところです。
最初の計画は、必ずしも、機関を要せずとも、帆力《はんりょく》を応用することによって成算を立てたけれども、どうしても補助機関が欲しくなるのは道理である。
そこで無謀に近い熱度を以て、駒井が自身その製作――という
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