とも、行者とも知らない兵馬は、変なことを言う人だと思いました。
「修行は水に限ったものです、厳寒に、氷を割って浴びる水の温かさを知ったものでなければ、修行の味は話せませんよ」
 神主がいうのを、兵馬は軽く、
「そうですかなあ」
と受けたままです。ところが神主は面《かお》だけは洗わないで、ゴシゴシ身体《からだ》を湯の中でこすりながら、
「万事、水で修行をしなければいけません。しかし、それもまあ身体に準じたもので、無茶に荒行《あらぎょう》をやるのも感心しませんな。あんた方なんぞはまだ若いで、少しぐらい無理をしても修行が肝腎《かんじん》ですな。水行と断食のことですよ、水行と断食をしっかりやっとらんことにゃ、身体の本当の鍛えはできませんわい」
 兵馬はそれを聞いて、ますます変だと思いました。この男は人を見かけに頭から説法する人だ、その説教を独断的に頭から押しつける人だ、ははあ、この山中に来ている行者の類《たぐい》だな――と兵馬は、そう気がついたものですから反問しました、
「もう永く、こちらに御逗留《ごとうりゅう》ですか」
「長いといえば長うがすな、この乗鞍の麓《ふもと》に落ちついてから二十年に
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