、鶏の声が聞えたから、はあ、もう占めたものだと夢うつつのさかいで、ホッと息をついていると、どこかで荒らかに戸をたたき、
「兵馬、兵馬、宇津木兵馬が、もしやこのところに来てはいないか、仏頂寺弥助と、丸山勇仙がやってきたよ」
 すわ! と夢うつつのさかいを破られました。来たな、どの面《つら》下げて何といって来たか。亡者《もうじゃ》とは言いながら、よく[#「よく」に傍点]かぎつけて来たものだ。こうなってみると、どっちが先走りをしたものかわからない。
 だが、あのいけ図々しいおとないぶりを見ても、このまま飛び出して対面してやるのも癪《しゃく》だ、竹林は抜けて鶏の音は聞いたが、実はまだ眠いのだ、よし、もう一寝入りして、奴等の気を腐らせてやれと、兵馬も相手が相手だけに、兵馬としては似合わしからぬ、狸寝入りを試みているうちに本物になって、寝耳のところに、
「兵馬、仏頂寺と、丸山が来たよ、いるんなら起きて出迎えろ」
 それをうとうとと小気味よく聞き捨てて、やはり夢うつつのところを彷徨しています。

         九

 その翌日は、白骨温泉の炉辺閑話に、変った面触《かおぶ》れが一つ現われました。

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