地獄では大変に幅が利《き》きますのよ」
「…………」
どうも、そう言われてみると、軽蔑と、冷笑とを以てしながらも、それを見ないわけにはゆきません。そこでお浜は、
「芝の山内《さんない》の松原で、あなたから、こんな目に逢わされてしまいました、この乳の下のがずいぶん深うございますよ、地獄へ来て、かかりのお医者様も驚きました、こういう無残な突き方は無いそうでございます、ですから、ごらんなさい、今でもこの通りなおりません、ひとりでに血が流れて参ります」
この時、お浜の面《かお》の色が真白にさえきって、呼吸が少し、ハズんだように見えましたが、その着物を投げ出すとまた向き直って、一心に着物をたたみながら、
「そんなことは、どうでもようござんす、昔のことを繰り返してみたところで、おたがいにいい気持はしませんからね。それよりか、あなたにぜひ一つのお願いがあるんですよ、これだけは、たって聞きとどけて下さいまし」
改まって言い出したが、竜之助は答えませんでした。
「ねえ、あなた」
相も変らずお浜は、着物をたたんでは積み、積んではたたみながら、
「ねえ、あなた、兵馬が今、わたしのところに来ていますが
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