ないじゃないか」
「まあ、よくごらんあそばせ、畳む着物も、畳む着物も、みんなこの通りでございます」
「どうしたんだい」
 見ると、お浜のうしろには、今まで畳み上げた着物が、山のごとく積み重ねてあることを知りました。
 だが、この通りでございます、といって示したこの通りが、どの通りだか、さっぱりわかりません。それをお浜は心得たように、羽二重《はぶたえ》かなにかの長襦袢《ながじゅばん》の真白なのを一枚だけ取って竜之助に見せますと、それには、べっとりと血がついておりました。
「おわかりになりまして?」
「うむ」
「これは地が白いから、わかりますが、黒いのや、紫や、紺地なのは、この血の色がわかりません。わからないけれども、どれとして一つ、血のついていないのは無いのですよ。まだベトベトとしめりの来ているのもあります、もう乾いて、ひきはなすとバリバリと音のするのもありますよ。ですから、畳み直すのに骨が折れて仕方がありません。まあごらん遊ばせ、これなんぞは、こんなに生々《なまなま》しい、さわると手がこの通りでございます」
 お浜は畳んでいた小手を上げて、その掌《たなごころ》から、手首から、二の腕のと
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