の五郎入道でなければ、越中の松倉郷、こんなところはいかがです、やっぱりいけませんか」
ピグミーは、竜之助の小手の上で、足拍子を二つ三つ踏みながら、
「尤《もっと》も……郷と化け物は見たことがない、と人が言いますからな。松倉郷の義弘は享年《きょうねん》僅か二十七で亡くなりました、天成の名人でございます、玄人《くろうと》は正宗以上だと申しますよ。二十七歳で亡くなって、天下の名刀を残した人ですから、刀を打ちにこの世へ生れて来たようなものです、天才ですね、とてもたまらないものです。郷の義弘には、妙所が八カ所ありますが、それを御存じですか」
ピグミーは、竜之助の、まともに向き直って、彼を動かすに、天才の感激を以てしようとしましたが、その時、竜之助は、
「時代違いだよ」
と言いました。
「えッ」
ピグミーは、仰山な驚き方をして、
「五郎正宗でなければ、郷の義弘という見立ては違いましたか、当りませんか、否縁までも参りませんか、これは、びっくり敗亡」
ピグミーは、そこで刀の方に向き直って腕組みをしながら、しきりに地肌や、沸《にえ》の具合を、ながめ入りましたが、
「時代違いとは恐れ入りました、失
前へ
次へ
全157ページ中46ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング