せんとすればするほどに、人をして、一種の哀感を加えしむるに過ぎないほどの光明を、それでも行燈子自身は非常に得意がり、自己眩惑に酔うているようであります。かわいそうに、飢えたる者が酒を飲ませられて、それで腹が満ちたりと喜んでいる。それよりか悲痛にして、なお滑稽なのは、抜からぬ顔で行燈から出て来たピグミー先生で、得意の鼻をうごめかしながら、
「どうです、この方が、ズッと景気がよいじゃありませんか」
しかも、机竜之助は何とも答えません。
「先生」
ピグミーは、恐る恐る竜之助の膝の方に近よって来ました。極めて小さいから、顔面の神経はよくわからないが、その挙動によって見ると、何の事だ、人間界の卑怯者と、諂諛《てんゆ》の者とが得てして行いがちの、狡猾《こうかつ》な、細心な、そのくせ、妙に洒然《しゃぜん》として打解けたような物ごしで、膝の傍へ寄って来たが、刀の鞘《さや》の方から遠廻りをして、腰へ近づいたかと思うと、いきなり、刀の下げ緒の結び目を、両手でしっかりと抑えてしまい、
「エヘヘヘヘ」
と、薄気味悪い追従笑《ついしょうわら》いをしました。
「何だ、何をするのだ」
竜之助も、彼が挙動の卑劣
前へ
次へ
全157ページ中43ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング