兵馬の目ざわりになったのは、
[#ここから2字下げ]
我来※[#「土+巳」、第3水準1−15−36]橋上(我れ※[#「土+巳」、第3水準1−15−36]橋《いきよう》の上《ほとり》に来り)
懐古欽英風(古《いにし》へを懐《おも》ひて英風を欽《した》ふ)
唯見碧流水[#「碧流水」に傍点](唯だ見る碧流《へきりゆう》の水)
曾無黄石公(曾《かつ》て黄石公《こうせきこう》なし)
[#ここで字下げ終わり]
というところの「碧流水」の三字です。
普通は、誰も「ただ見る碧水の流るるを」とか、「ただ碧水の流るるを見る」とか吟じたがり、現に唐詩選にもそのように出ているはずなのを、この筆者は「唯見碧流水」と書いている。碧流水[#「碧流水」に傍点]ではおかしい、多分、筆勢のあまりで間違えたのだろう――というように、兵馬は見てしまいました。
その次には、次のような文字が、無雑作《むぞうさ》に書き飛ばしてある。
[#ここから2字下げ]
敵は大勢
味方は一人
頼むお前は二心
[#ここで字下げ終わり]
ざれがきではあるが、兵馬はちょっと考えさせられました。
さてその次には、多分ここの温泉風呂の浴槽の写生か
前へ
次へ
全157ページ中35ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング