し呆《あき》れ返る幕が見られるはずなのを、皮肉といおうか、これも偶然といおうか、火と、炭と、お粥とを持って来たものは、約束のお雪ちゃんではなくて、洒然《しゃぜん》たる北原賢次でありました。しかも、その北原賢次が入り込んで来た時に、宇津木兵馬が眠っていたということも、ゆくりのないことです。
 兵馬は熱をとってしまおうとして、用意の薬を熱湯に注いで頓服し、そうして蒲団《ふとん》の温みに圧《お》されて、昏睡的《こんすいてき》に眠りに落ちた時分に、北原賢次はお雪に代って、粥と、火と、炭と、アルバムとを持って来たのですが、兵馬の熟睡を見すまして、そっとそれらのものを枕もとに、程よく配置しておいて、直ぐに出て行ってしまいました。
 兵馬が眼をさましたのは、それよりズット後のことで、ほとんど熱もとれて、頭も軽くなった気分で、枕もとを見ると、そこにかなりに行届いた待遇がしてあるものですから、兵馬は、あの親切な娘さんのしてくれたことだとこの時も感謝の念、と同時に、兵馬は、薬缶《やかん》や土鍋《どなべ》類とは別にして、左の方の蒲団わきに、見なれない一冊の画帖のあることを認めました。
 自分のものでない限り
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