泉を立ち出でました。
 例の鐙小屋《あぶみごや》の神主をも一応おとずれて行こうと、無名沼《ななしぬま》のほとりに来て見れば、なるほど、小屋はあるが人が無い。多分、山上へ修行にでも行って留守なのだろう。
 逢えない時には逢えないものだ――兵馬は、軽いあきらめを以て、かねて教えられていた道筋を、飛騨の平湯の方をめざして、山渓の間に没入してしまいました。
 来たる時に、兵馬を誘引したらしい「鈴慕」の曲も、帰る時は音沙汰《おとさた》がありません。

 こうして二ツの星が、逢わんとして、閾《しきい》の内と外まで引寄せられて、また相距《あいさ》ること千万里。
 しかもそのいずれも、自らきわどい運命を知ることができませんでした。
 ことに兵馬は幾度か、こんな目に逢わされつけているが、自分がそれを知らないだけに、神様のいたずらに腹を立てたこともなければ、運命の数奇に頓悟したこともない。
 多分、それは神様の方で、出直せ、出直せとおっしゃっているのかも知れない。求めよ、さらば与えられんとはいうが、求めて与えられないのは、求め方が間違っているのかも知れぬ。
 これは単なる離合のあやつりではあるまい。
 求
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