て、向うの降り口を鍵の手に廻り、さっさと二階へ下りて行くのを認めます。しかも、その人が、女であることが、ハッキリと兵馬の夜目にうつりました。
 女でありさえすれば、それはこの全宿中に一人しかあるべきはずはない。自分が今たずねてみようかしらと心がまえしているところのあの娘――
 そこで兵馬は、ハテと胸をつかれました。
 この暗いところから、あの娘はひとり、三階まで何しに来たのだろう。
 下へおりて行くならば、どこへ行こうとも順だが、間違って上へのぼるはずはないのだ。それとも、三階へ座敷替えでもしたのか。
 だが三階のどこにも火の気のありそうなところは見えない。火の気が無ければ、人の気が無いのだ。その火の気も無い座敷の一つを、あの娘がおとずれたもののようにしか思えないのが、おかしいではないか。
 その不審は不審として置いて、兵馬は同じところから二階へ下り、案内知った東南の隅の間に近づいて見ると、ここは明りがしていますから、障子へ手をかけて、
「御免下さい」
とたずねてみたけれども、返事がありません。
「お不在ですか」
 それでも返事がありませんけれど、思いきってその障子をあけて見ましたが、
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