頂上で寝《やす》むのだそうでございます」
「なるほど」
「それから、あの乗鞍ヶ岳には、天安鞍《あめのやすくら》というのがあったそうでございます、その鞍を馬につけて乗れば、どんな馬からでも、落ちることがないと申します」
「うむ」
「槍ヶ岳には、天日矛《あめのひほこ》というのがございました、その矛先は常に盛んなる炎に燃えていたそうでございます」
「ははあ」
「それから越中の立山《たてやま》――ごらんなさい、あの雄大な、あの険峻《けんしゅん》な一脈が、あれが立山連峰でございます。立山の上には、天広楯《あめのひろたて》というのがございました、敵にその楯を向けると、敵の大小によって、楯が伸び縮みをするという楯でございます……」
「お雪ちゃん、お前は何でもよく知っていますね」
「わたしが、そんなに物識《ものし》りなのではございません、みんな白骨温泉の炉辺閑話の受売りでございますから、買いかぶらないように、お聞き下さいましよ」
ここで、今までは、神仙化されていた娘の生《しょう》の姿が、ちょっとひらめいたので、あぶなく現実に帰ろうとした竜之助の眼が、立山連峰の一つの、最も鋭く、最も険峻なるものに、ひ
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