ら、それで、わたしの夢もついつい、山のことになってしまうんじゃないかと思います。けれども怖い夢や、イヤな夢を見るより、山の夢を見る方が、どのくらい楽しいか知れません。それは山へ登りたいと思いながら、登れないものですから、よけい、夢になりたがるんでしょうと思います――わたしの見た山の夢を、話して上げましょうか」

 山の話が讖《しん》をなしたものか、お雪の雄弁――熱を以て語る山のあこがれが、竜之助の頭脳のうちに絵のような印象を植えつけたものか、その夜、竜之助は、雪を頂く高峰のめぐるある地点に立つところの自分を発見しました。
 銀のような山上の雪のまばゆきに映りあって、その空の碧《みどり》のまたなんというめざましいことだろう。人の魂を吸いこむほどの碧の色、こうもまあ冴《さ》えた色があり得るものかと思いました。
 有らん限りの自分の視力を払って、竜之助は高峰の山々をながめました。
 その山々の名は先刻、いちいちお雪から指さして教えられたはずであったが、今は茫洋として覚えておりません。名の記憶は茫洋に帰してしまったが、自分の放つ視力のめざましさは、疑おうとしても、疑うわけにはゆきません。
 遠
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