、見るともなしの隙見で、羽目の隙間から中を見ると、兵馬の姿を明らかに認めることができました。
 この時は、兵馬を兵馬として明らかに認めたのだから、驚きました。
 到着の最初から、今まで、言葉も交わしたし、形も見ていたし、看病の親切までしてやっているはずなのに、おたがいにまだそれと気がつかずにいたのを、ここではじめて、お雪の方から兵馬というものを、兵馬としての全体を、不意に受取ったのだから、驚くのも無理はありません。
 ある日の夕方、疲れ果てて、自分の月見寺の井戸のそばへ来て、一杯の水を求めた可憐《かれん》な旅の人が、その人でした。
 そうして、同情のあまりにその夜さ[#「夜さ」に傍点]を寺に泊めたために、計らず自分たちが危難を救われる縁となったのは、その人ではないか。
 何かを求めて、旅にさすらいの人とは言いながら、ここであの人に――お雪は飛び立つほどに、その奇遇をなつかしく思いましたけれど、兵馬の方ではいっこう気がつかないで、まだ隙見の人は隙見をやめないなと、軽く気に留めているばかりです。
 目のあやまちではないかと、お雪ははやる心を鎮《しず》めて、とっくりと兵馬を見定めようとしまし
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