落しでは、どうも火持ちが悪うござんすからな」
 その時に、会話を中止して、こちらを見ていた村田が、
「お雪さん、あなた、このごろどうかなさいましたか、ちっとも姿を見せないじゃありませんか」
「いいえ、どうも致しません」
「今、皆さんで、あなた方の噂《うわさ》をしていたところです、ちと、お話しなさいましな」
「有難うございます」
「あまり遠慮をなさってはいけません」
「遠慮なんて、しやしませんけれど」
「では、少しお話しなさい」
 それでも、お雪は入ろうとしないで、例の薄暗いところに立ち姿の半身で、あるが如く、なきが如くに、しおらしいものであります。
 ここでは、すすめられても遠慮をしているくせに、一方では、頼まれないのに、部屋部屋の火の心配までして、ほとんど女中代りの世話まで好んでして歩くものらしい。
 宇津木兵馬も、その時、そう思いました。自分の部屋も、自分が立つまでには、そんなでもなかったが、そのあとで、この娘さんがしらべてみた時分には、炬燵《こたつ》の火が消えてしまっていたのかしら。そこまで気を利《き》かせてくれているこの娘さんの、相変らず行届いた親切ぶりが、宿の人でないだけに、
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