かい》の国では、並びのない大家だとかいわれておりました、それをあの火は、一晩のうちになめ[#「なめ」に傍点]てしまいます」
「お嬢様――あなたは、それがいいお気持なのですか」
「まあ、お聞きなさい、人の惜しがるものでも、惜しがらないものでも、火はああして平等に灰にしてしまいます」
「平等という言葉は、左様な時に用うべき言葉ではありません」
「それでも、火には依怙贔屓《えこひいき》というものが絶対にないではございませんか、焼けるものと、焼けないものとは、火の力の度の加減があるのみで、この地上で、火に焼けないものとて、何一つもありません」
「いいえ、あります、あります」
「ありません、決してありません、火は愛です、絶大の愛です、誰が、火を怖ろしいと言いましたろう、誰が、火を災《わざわい》といいましたろう、あのくらい、隔てなく愛するものはこの世にはありません、ひとたび火の洗礼を蒙《こうむ》った人には、微塵も未練《みれん》というものが残らないではありませんか、あの絶大な愛の力に溶かされ、包まれ、同化されてゆかない何物もないではありませんか、火は力です、火は愛です、わたしはあの火にあこがれる」
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