流して、人に使われるように出来てるものだな」
「いかがですか先生、ここを下りますると、あの一枚岩の上へ出ますが、酒肴《しゅこう》を持たせてあれへ参り、あの上で風景をながめながら、お話を伺いたいものでございます」
僧形の同職がすすめるのを道庵は、首を横にふって、
「まあ、せっかくだが、興は満なるを忌《い》むということがあるから、この辺でチビチビやりながら、寝覚の床を鷹揚《おうよう》にながめて、貴殿の人国記を承っていれば、もうもうこれ以上は罰《ばち》が当る、このうえ押して、谷からすべり落ちて、川へでもころげこんでごろうじろ、生きちゃあ帰れねえ、ホラ、この通りの足もとなんだから」
といって、道庵は、フラフラと立ち上って見せました。
道庵の足もとのあぶないのは、今にはじまったことではない。その足もとのあぶないことを自覚して、そうして、多少の冒険をも慎《つつし》もうとするところに、道庵の聡明さがあるといえばあるのです。
「足もとが、こんなだから、足もとの明るいうちに失礼して帰ると致しましょう、どうもはや、おかげさまで寝覚の床をとっくりと見物したから、寝ざめの悪いこともござるまい――ああ、そう
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