、川狩りが今日は休みでございます」
 僧形の同職がこう言ったものですから、道庵は聞きとがめて、
「川狩りの検分というのは、何ですかね」
「それは、その、木曾のお山から伐《き》り出しました材木を、この木曾川から流し落すのでございます、これがまた他国では見られない見物《みもの》でございましてな」
「なるほど」
「谷に沿うたところには椹《さわら》が多くございますが、奥へ行くと檜《ひのき》が多いのでございます、千古《せんこ》斧斤《ふきん》を入れぬ檜林が方何十里というもの続いているところは、恐ろしいほどの壮観でございます。伊勢大神宮の御用林もその中にございます。それを、高さ二十間もある大木を、この辺の樵夫《きこり》は手斧《ておの》で伐り倒しますが、その技《わざ》の鮮やかさは、これも他国の者が舌を巻いておりまする。そうして、それを高いところから、時とすると五千尺も高いところから、その材木を渓《たに》へ向ってすべり落させる、それがまた命がけの仕事なんで、材木を渓谷へ落し込んで置きまして、秋の出水を待って、筏《いかだ》に組んで、木曾川の下流へ流すんでございますが、それを川流しとも、または川狩りとも申し
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