お借上げのこともおじゃん[#「おじゃん」に傍点]になってしまいました」
「そりゃ、そうありそうなことだ、そうなけりゃあならぬことです。しかし、鈴木少年家老の器量、あっぱれ、あっぱれ、まさに木村長門守血判取り以上の成績だ、誰が知恵をつけたか知らねえが、出来ばえは申し分がねえ」
と道庵も感心をしました。僧形の同職は、なお念をおして言いました、
「かりにその時、退引《のっぴき》なく三年間というもの、この木曾山を公儀へお貸し申してみてごろうじませ、それはなるほど、木曾山山林だけで、大公儀の財政の急を救ったかも知れませんが、山はさんざんになって、この頭のような有様になってしまわないとも限りませぬ」
といって僧形の同職は、自分の頭をツルツルと撫で廻し、
「しかるに先生のお頭《つむり》のように、いつも若々しく緑の色|鬱蒼《うっそう》と、この木曾の山が森林美を失わずにおられますのは、つまりその時の鈴木千七郎殿の舌一枚でございました」
と言われて道庵がくすぐったい顔をして、自分の頭の即製のハゲかくしを撫でてみました。
「それで今日は、その尾州家の木曾領お見廻りの重役が、この川狩りを検分に参りましたために
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