弁舌ときた日には、徳川三百年でも、ちょっと比較のない男だよ、弁舌がさわやかで、威力があって、男ぶりがよくて、腕が出来ている。水戸の藤田東湖のようなむずかし屋でさえ、水越[#「水越」に傍点]の弁舌には参っていたよ」
と道庵が言いました。そうすると僧形の同職が、同じような調子で答えて、
「その通りでございます、その通りの威力と、弁舌で、高圧的に、御都合|之《こ》れ有り、尾州領木曾山林、三カ年間公儀へ借り置く旨《むね》の申渡しがありますと、鈴木千七郎殿それに答えて申さるるには、仰せの趣、たしかに承知致しました、しかし、私方にもこの際、一つのお願いの儀がござりまするが、幾重《いくえ》にもお聞届けのほど願わしうござりまする――と鈴木殿が、水野閣老に改まって申し出でたものでございます……そこで越前守が、願いの筋とは何事でござるぞ……千七郎殿答えて、余の儀でもござりませぬ、尾張の国一円、近年はことのほか豊作続きでござりまして、到るところ米穀が溢《あふ》れ、これを積み置く場所もなき有様でござりまする、野天《のてん》へ投げ出して、せっかくの天物を空《むな》しく風雨にさらし置くは勿体《もったい》なきことの
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