ひっかかっているのか、その辺の見当もつかない。後者であるならば、ここに相当の時間を待っていさえすれば、必ず一度は訪れるものに相違ないが、前者であった日には当てが外《はず》れる。
見ていると、遊覧の人のうち、気の利《き》いたのが寺の前庭から、岩を伝うて下へ降る様子である。
ははあ、あそこから下りられるんだな……と合点して、たずねてみると、ここで見るのは寝覚の床の全景――ここを下ると横幅十間、長さ四十間の寝覚の床の一枚岩の上に出られるのだという。
そういうことなら、この下が本場なんだ。多分本場のその幅十間、長さ四十間という大岩の上あたりで、飲みながら、わが道庵先生は、太平楽《たいへいらく》を並べているのだろうと米友が思う。
そこで岩角をくぐって下りてみる。この路はかなりあぶないが、米友の足では何でもない。そうしてまもなく木曾川のほとり、寝覚の床の一枚岩の上まで、難なく米友は下り立ったが、そこにはまだ誰もおりて来ていない。
米友ひとりが、寝覚の床の一枚岩の上に、脚下に滝なして漲《みなぎ》る水の深さもはかりがたく、目もくるめく心地するというところの上に突立ちましたが、道庵の姿はいずれ
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