三両でよかった、三両でお売りなすったから、まあよかったようなものさ、これを、百両百貫とでもいってごろうじろ、道庵だって考えらあな」
と言って道庵が、むやみに安心してしまったが、その男にはのみこめないようです。
 三両でよかった、三両で人の娘を売ったからまあよかった……という言い分は、ずいぶんぶしつけ極まる言い分であります。さきには人道問題だとまで絶叫したのを、相場が三両だからそれでよかったという言い分は、どうしても聞えない言い分であります。そこで右の男も、敬遠に加うるに、幾分か憤懣《ふんまん》の色を見せて言いました、
「御苦労さまでございます、どちらのお方様か存じませぬが、どうかお休み下さいまし、わたくしももうあきらめて、休ませていただきますでござりますから。おやかましうございました」
 こう言って、婉曲《えんきょく》に道庵の退却を求めるようになりました。道庵はそれを耳にもかけず、突然また大きな声を上げて、
「友様や、友さんや」
「おーい」
 一議に及ばず、米友が返事をしました。実はさいぜんからの事のいきさつを、米友は蒲団《ふとん》の上に起き直って、委細うかがい知っているはずでありまし
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