す。
そこで、大体そんなような気分で、寝もやらず、さめもやらずに浮かされていると、ふすまを隔てた一方の室にあたって、気になるものがありました。
縁起でもない、どうもさいぜんから、誰かこの隣室にそっと送り込まれて来てはいるようだが、この際、しきりにしゃくり上げて泣いているようであります。
最初は道庵も、あまり気にしませんでしたが、そのしゃくり上げて泣く声が、ようやく耳にさわって来ると、先方はついには声を挙げて泣き出さぬばかりになっては、それを我慢して、またしゃくり上げていることが、かなり長い時間にわたっているものですから、道庵先生が、少しくうるさいと感じました。
何だい、何を泣いてやがるんだ。その、しゃくり上げっぷりによると女じゃあない、男に相違ない。相当の年配の男のくせに、めそめそと、人の隣室へ来て、夜中に、泣いて聞かせる意気地無し――という気になったものですから、少しいって聞かせてやろう、という勢いになりました。
ここが、道庵先生のお節介なところで、癪《しゃく》にさわったら寝ていて、あてこすってやってもよし、怒鳴りつけてやってもかまわないところですが、この先生は、すっくと起
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