いから、そのうちには鎮《しず》まるだろうと道庵が辛抱していると、道庵の寝ている外の廊下を息せき切って、酒に酔っているらしい一人の女が、
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木曾のナア、かけはしゃナアンアエ
からみつく、蔦《つた》がナアンアエ
わしにゃ蔦さえからみつかない、ナアンアエヨウ
どっこい、どうしん
ころものほうがん
じょでこい、じょでこい
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と肉感的な声で歌いながら、足拍子を踏んで通るものだから、道庵が、
「これこれ、静かにしろ」
と大きな声でしかりつけました。

         二十七

 道庵が、寝ながら頭の寒いことを感じ出したのは、今晩に始まったことではなく、つまらない一時の感激から、額をそり上げてしまったことを、今も悔《く》いているのです。というのは、松本の芝居小屋で、川中島の百姓たちが大いに気焔を上げたのを見て、急に武者修行をやめて、百姓になる気になり、茨木屋《いばらきや》の佐倉宗五郎気取りで、すっかり百姓風に納まったはいいが、久しく総髪でいた頭を、おしげもなく剃《そ》り上げてみると、そこから風がしみ込んでたまらないのです。ことに木曾街道へ来てから、木曾
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