ハ貴《き》ニヨク、或ハ賤《せん》ニヨシ、上ハ王皇ニ陪シテ栄ト為サズ、下ハ乞児《きつじ》ニ伍シテ辱ト為サズ、優游シテ以テ歳ヲ卒《をは》ルベキモノ、唯我ガ技ヲ然《しか》リト為ス……エヘン」
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ここでも、わざとしからぬ咳払いを一つして、荘重《そうちょう》に句切りをつけましたが、急に大きな声で、
「ナムカラカンノトラヤアヤア」
と叫び出しました。
これは全く意表に出でた文句の変化であって、前段に読み来《きた》ったところのものは、たしかに医書であります。その医書のうちの会心のところ、道庵からいえばかなり手前味噌になりそうなところを二三カ所、朗々として読み上げて来たのですけれど、それは職業の手前|咎《とが》める由は無いが、ここに来って急に、「ナムカラカンノトラヤアヤア」と言い出したのは、どう考えても理窟に合わないことです。木に竹をつぐということはあるが、これは医につぐに呪《じゅ》を以てするとでもいうのでしょう。しかし、ここでは聴衆というものがないのだから、道庵自身がそれを問題にしない限り、弥次《やじ》る者も、笑う者もありませんから、いよいよ図に乗って、
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