応その気配をうかがった上で、身の振り方をきめようとの要心と見える。
だが、与八としても、気が利《き》かないことの限りで、こうして、先方が油断している隙《すき》に飛びかかって、その大力でもって相手を組み伏せるとか、縄をたぐって引き寄せて、自分で安全圏を作っておくとかの余地は十分にありそうなものを、相手に首を巻かれっぱなしで、その死命を制せられっぱなしで、自分の活地を作ろうと、努力するだけの機転の利かないのが、この男の取柄《とりえ》かも知れない。
「それじゃ、若い衆さん」
と七兵衛は、ほぼ、あたりの形勢にも見当がついたらしく、
「私は、これでお暇《いとま》をするからね、この川を飛び渡って柚木《ゆぎ》の方へ出るつもりだから、私がかなり逃げのびたと思う時分まで、お前、騒いじゃいけないよ、泥棒! なんて大きな声を出すと承知しねえぞ」
「大丈夫だよ」
「犬はいねえようだな、あの厄介《やっかい》な犬は、跡をついて来ちゃあいねえようだな」
「大丈夫だよ、ムクは、逃げる者を、そんなに長追いをするような犬じゃありませんよ、それよりか、家を守っている方が大切ですからね」
「それで安心した」
七兵衛ほどの
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