の裏を行って、生馬《いきうま》の眼を抜くという人間共のかすりを取って、なにくわぬ面《かお》で今日まで生きていられた自分というものが、今晩はここで、人並足らずの間抜けのような若い男と、畜生の一つのために腸《はらわた》まで見透かされているというのも、痛いような、痒《かゆ》いような、くすぐったいような、わけのわからぬ訳合《わけあ》いのものだ。
 そこで七兵衛は、空しく、
「なるほど」
と頷《うなず》いて、与八の面《かお》をながめたっきりです。
「この縄を取っておくんなさい」
と与八が言いました。放心したもののような、緩《ゆる》めきってはいたが、さいぜんの縄は、やはり与八の首に巻きついているには、巻きついていたのです。
「なるほど」
と言ったが七兵衛は、要求通り、その縄を外《はず》してやろうでもなし、それを強く締めようでもなし。
「ねえ、縄を取っちまっておくんなさいよ」
「ま、待ってくれ」
 七兵衛は耳を澄まして、何か物の気配《けはい》をうかがおうとしているのは、つまり犬が怖いのでしょう。たった今吠えられたという犬が、自分のあとを追いかけて来て、或いはその辺の戸際に待伏せでもしてはいないか。一
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