す。自分の両親の、せめてその一方をだけでも、与八は知って置きたいという常々の願望を、口には出さないけれど、その折々《おりおり》にお松が察しているものですから、お松から勧めて、その捨てられたという場所へ地蔵様を立てさせたり、それを最初に見つけたという人の縁故をたどったりして、何がな与八の本心のよろこびを迎えようと力《つと》めているくらいですから、お松の方から改めて、こんなことを言い出すのは、自分としても心持よくないし、与八をもかなり失望させるに相違ないとは思いながら、何か思いさわる事あればこそ、こうも言い出してみたのでありましょう。しかも、思い止まろうかと言い出したお松に、思いとどまる気のないように、どうでもいいことのように、返事をした与八にも、必ずしもどうでもいいとは、あきらめ切れないことでしょう。
そこで、お松は、何ともつかずにこう言いました、
「ねえ、与八さん、もし、お前の本当のお父さんという人が、悪い人だったら、どうしますか」
そこで与八が、
「悪い人だって、親は親だからなあ」
と返答しました。
「でも、その悪いというのが、ただ喧嘩が好きだとか、お酒のみだとかいうばかりじゃな
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