、刎《は》ねられた首が六尺高いところに上げられている運命。それを絵馬《えま》にうつして、神仏の御前に奉納するというのは、全く例のないことで、そうして、いたずらとしても無下《むげ》、非礼としてもこの上もない仕事であります。
それも、子供のいたずらではない。相当の心がけを持って、絵馬師に描かせたものではないが、普通の人が、かなり丹精に、絵馬の筆勢に似せて描いたものであります。
お松は、何ともいえないイヤな思いをさせられながら、手をのべてその絵馬を取外《とりはず》し、なお念のために、その絵馬の裏を返して見ますと、そこには、これも相当の老巧な筆で、単に「巳年《みどし》の男」と認《したた》められてあるのを発見しました。
絵といい、文字といい、これはお松にとっては容易ならぬ謎《なぞ》となりました。これを納めた人の心こそ、測りがたいものだと思いました。
幾度か、打返し打返し見た後に、お松は何かハッと打たれたものがあるように、自分の胸を打つと、馬の背の上から風呂敷を取り出して、その絵馬を包んでしまい、そうして、大切に鞍《くら》の前輪へ結びつけておきました。
そうしておいてから、さて改まった気
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