「何だ、お前、器量と、かっぷく[#「かっぷく」に傍点]とを、ごっちゃにしちゃいけない」
神尾が眼をまるくして言うと、七兵衛がさあらぬ体《てい》に、
「器量のところも大きいかも知れませんが、体格のところも人並じゃございません、いまいった通り、横綱の陣幕とおっつかっつ[#「おっつかっつ」に傍点]でございましょう、そうして、眼がすてき[#「すてき」に傍点]に大きくって、爛々《らんらん》と光っております」
「そうか――」
「滅多に口は利《き》きませんが――急所急所で、うむうむと、口を結んでしまいますと動きませぬ。尤《もっと》も、わたしのあとをつけてみたのは、薩摩屋敷から品川へ出て、東海道の道筋を微行《しのび》といったようないでたちで、同勢僅か二人をつれて、こっそりと旅行中のことでございましたから、誰も、あれが薩摩の西郷だとは気がつきません、また御当人たちもああして、誰にも気がつかれないようにして、江戸の薩摩屋敷へ度々《たびたび》おいでなさるんだそうですから、屋敷内でさえ、西郷どんがいつ帰られたのだか、知った者もないくらいなんですが、そいつを、わっしが確かに見届けたものでございますから、一番
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