クル水を汲んでたて直す体《てい》を見て、神尾主膳がカラカラと笑いました。
 多分、この無邪気にして、爽快な、空中の彩色を見て、自分というものの少年時代を想い浮べたのでしょう。
 凧の糸目をつけるはなかなかコツのあるもので、子供でも、器用な奴と、無器用な奴のすることには、天と地ほどの相違がある。つまり、器用の奴のやるのは、天上に舞いのぼるが、無器用の糸目をつけた凧は、逆立《さかだ》ちをして地上をかける。そうして自分はというと、憚《はばか》りながら、子供の時分から凧の糸目をつけるのは上手だった。自然、凧揚げも下手ではなかった。凧の喧嘩には、いつも勝って、相手のやつを吹っ飛ばしてやったものだ。
 そうだなあ、もう、こんなに凧が流行《はや》ってもいい時分だ――と主膳が、そんな空想に駆《か》られている間、不幸なのは木蓮の枝にひっかかった巴御前で、外では相変らずグイグイと力を極めたり、ゆるめたり、百方苦心して、引き取ろうとするが、いよいよ取れないで、木の枝にいよいよからみつく。それを主膳は、だまって見ているうちに、垣の外でワッと大声に泣き出す声が聞えました。
 その時、どこをどうしたものか、三人ば
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