と、田山白雲とは、種《しゅ》の問題にまで会話が進んだ時に、金椎《キンツイ》のために腰を折られました。
 しかし、駒井は「種」ということには相当の見識は持っているらしい。今までの会話では、田山の方がむしろ現実的で、駒井が有史以前の動物にまで想像を逞《たくま》しうしたようですけれど、駒井が、ああ言うからには、何か相当の科学的――といわないまでも、新しい知識に刺戟されたには相違ありますまい。
 ただ惜しいところで、話の腰を折られてしまいました。
 そうかといって、リンネよりキウエーにいたる種の不変の説を、この時代の駒井が、どれほど理解していたかは疑問です。いわんや、金椎によって、ようやくこのごろキリスト教の眼をあけられた駒井が、生物進化論にまで飛躍しているとは、全く想像し難いことであります。ダーウィンが「種の起源」の初版を出したのは、ここに駒井がこうしている数年前のことではありましたけれど、いかに新知識でも、当時の日本人としては、それを受入れるにはあまりに早過ぎます。しかし、早過ぎるからといって、当時、出来ていた「種の起源」の新説が、何かの機会で、たとえば、鉄砲の包紙の一片か何かにはさまって
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