弁信さんていう人がいい人なの」
「いい人というわけじゃないけれど、さぞ、あたしを尋ねていることだろうと思うと、あたしも、あの人に逢いたくってたまらないのよ」
「駒井の殿様もいらっしゃるし、白雲先生もおいでになるし、金椎《キンツイ》さんだって悪い子じゃなし、それに、わたしというものもいるのに、それだのになお、お前は、弁信さんという人が、そんなに好きで、みんなをあとにしても、それでも弁信さんに逢いたいの、それほど、弁信さんという人はいい人なの?」
「どうかして、ここへ、弁信さんを呼んで来ることはできないか知ら」
「ところさえわかれば、できないことはないでしょう」
「それがわからないのです。さっきは、富士山の後ろの方から面《かお》を出したから、たしか、あの辺にいるのかも知れません」
「富士山の後ろって、お前……そんなお前、広いことを言っても、わかりゃしないじゃないの」
「ああ、弁信さんに羽が生えて、この海を渡って、飛んで来てくれるといいなあ」
「弁信さんて、そんなにいい人なの、憎らしい、弁信坊主――」
といって兵部の娘は、海を隔《へだ》てて罪もない富士山を睨《にら》みました。
「お嬢さん、千
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