魚《うにこうる》の角は角というよりは嘴《くちばし》だ。竜駒、海蛇、有るには有るが問題にならぬ」
駒井甚三郎は、漁師らのいわゆる「海竜」なるものを、まじめに、つまり科学的に考証してみようと苦心しているが、田山白雲はさのみは追究せずに、
「疑心暗鬼でしょう、幽霊の正体見たりなんとかで、つまり、何か彼等が見あやまって、それを一途《いちず》に恐怖の偶像にしてしまったんですね――追究してみれば、存外くだらないことなんだろう」
「しかし……」
と駒井は、相変らずまじめに考えているのは、よしそのことが暗鬼であるにしても、偶像であるにしても、その暗鬼を映し出した偶像を、浮び上らせた本体というものに、その出来事とは全く離れた水産上の想像を打ちすてておくわけにゆかなかったからです。何となれば、いかに疑心といえども、狼狽といえども、鰯《いわし》を鯨と見るはずはないからであります。
海竜として、かれらが怖るべきものを見たとすれば、よし全然間違いであったとしても、多少形体において、それに似通《にかよ》った存在物を見たものとしなければならぬ。かれらが疑心をもって、海竜にコジつけたその本体は何物だかということが
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