で、或いは海の魚を河へ移すことができるようになるかも知れぬ、この海に無い魚類を、かの海から取って繁殖せしめることもできるようになるかも知れぬ。その点からいうと、魚類に富む日本の将来は有望で、浦安の国という名が当っているようです、世界の魚の卸問屋になれるかも知れません」
「なるほど、お説の通りです。なにしろ、日本は周囲がみな海ですからね、魚類において恵まれているのは当然で、それを利用することを忘れては、天地の化育にそむくというものでしょう。ところで、その日本にすむ魚は、何種類ありましたっけね」
「おおよそ二千種、そうして、その半ば以上は食べられます」
「二千種類、非常なものですね、我々の粉本の中に納められているものは……何種あったか、ちょっと忘れたが、九牛の一毛だ」
 その時、夜の外の窓口に、あわただしい人声があって、
「番所の先生、先生――大変でございます、塔婆《とうば》の浜へ海竜《うみりゅう》が出ました」
「海竜!」
「はい、海竜が出ました、角《つの》を二本|生《は》やした、こんな怖い顔をして、お杉のあまっこ[#「あまっこ」に傍点]を追っかけて来たのを、命からがらで逃げて来やんした」
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