術がわかってたまるものか。
 そこへ行くと鼠の方がどのくらい可愛ゆいか知れやしない。気の毒そうに、おどおどして人間の物を荒しに来るあのいじらしさ。あの眼つきをごらん、鼠のいたずらを歯がみをして憎がるものでも、あの眼を見た日には、誰も可愛がらずにはいられまい。
 しかし図々しい奴はどこまでも図々しく、箸にも、棒にも、かからない奴は、どうも仕方がないもので、さしもの茂太郎の心の中で、これほどの憎しみと、軽蔑を受けながら、いったん、姿を隠したと思った猫が、ぬけぬけと茂太郎の前へ姿をあらわして来て、例の柔媚な、むずむずとした形で、主人の鼻息をうかがいながら、火の傍へ近より、とうとう、そこに、いい心持でうずくまってしまいました。
 見れば猫のうちでも、最もたちの悪い老猫《ろうびょう》だ。
「ははあ、それでは猫、お前にも、わたしの芸術がわかるかい」
 茂太郎はその図々しさに呆《あき》れ返って、さてまた、寥亮《りょうりょう》として、清にして且つ悲なる蘆管《ろかん》を取って、海風に向って思う存分に吹きすさびました。
 猫は眼をつぶって、それを聞いている。彼の芸術に心酔するようなふりを見せて、その実、た
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