ろうともしないのが不思議です。
砂浜を走れるだけ走って、かなり走り疲れたと思う時分に踏みとどまり、ようよう暗くなってゆく海の波がしらの白いのを、ながめて、こう言いました、
「弁信さん、弁信さん、さっき、お前が、しきりにあたしを呼ぶものだから、あたしはこうして飛び出して来たんだぜ、あの赤い空の上に、不意にお前の姿が現われたじゃないの……だから、こうして、ここまで走って来ちゃったのよ。ここまで走ってくると、お前はもういないし、日もくれちまったじゃないの。これからあたしは、どうすればいいの」
耳を傾けても、波の音ばかりで、返事をする声が聞えないのに、
「さあ、どうしたらいいの、ここは海で、これより先は行けないじゃないの、これから、どっちへ行けば、あたしはお前に逢われるの?」
茂太郎の耳には、やはり弁信の呼びかける声が聞えて、その返事を待つもののようです。
海の表に向って、耳をすましていたが、やはり人間の声はどこにも聞えない。
「お腹《なか》がすいちゃった」
茂太郎は、クルリと向き直って、陸《おか》の方を見直しました。
洲崎《すのさき》の番所では蒸したてのジャガタラ芋《いも》の湯気
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