ちのゴシップを聞いてごらんなさい。大体こんなようなことを言っているのです。
この火事の前、お銀様が烈しく怒っていた。それは何の因縁《いんねん》だかわからなかったが、今晩の怒り方は、いつもよりもいっそう烈しかったということである。
そこへ、例の弟の三郎が入って来た。実は三郎が来たためにお銀様が、そんなに怒り出したのかも知れない。その前後のことはわからないが、とにかく、三郎様も火のように泣き出した。そうすると、奥様が――つまり三郎様には実の母親、お銀様には継母であるところの――奥様が今日はまたそれについて、烈しい御立腹のようであった。
火事! といった時、火の廻りの早かったこと。それは油か、煙硝《えんしょう》かの助けがなければ、到底こんなに早く火が廻るはずがないと思われたほど早かったと、その場に居合わせたもののように言う者さえある。
その結果、ついに、つい今まで三人の方の行方不明《ゆくえふめい》となったので、弁信だけはつけたりになっている。
これらのゴシップは、日頃が日頃だけに、だれの頭にも、多大の疑惑を植えつけぬということはない。
親子兄弟の間が棟を別にして、絶えて往来をしないという家風――そこからだれの頭にも、この事変に関聯して、怖ろしい想像が湧かないということはないが、物蔭のゴシップにしても、そこまでは口にのぼせていう者がない。
この時分、お銀様はもう、ずっと離れた文庫蔵の二階へ来て、屏風《びょうぶ》の中へ身をうずめてしまいました。哀れなる弁信は、かねて、自分の居間と定められた、お銀様の家の一部を焼かれてしまったものですから、身を置くところがありません。肝腎《かんじん》のお銀様がそれを忘れて、かまわないでいるくらいですから、誰とて弁信のために手引をして、新しい座敷を与えてやろうという者がありません。
ぜひなく、欅《けやき》の大樹の下に莚《むしろ》をしいて坐り込みました。
けやきの大樹の下に座を構えていた弁信は、今、眼前に大きな火の海を見ました。
大火がおおよそしずまった時分になって、はじめて弁信は、その見えぬ眼前に、広大なる火の海を見ました。
火焔何十里にひろがる火の海を見ましたが、弁信の見た火の海は熱くありません。色は赤く、紅蓮《ぐれん》のように金色《こんじき》を帯びてかがやき渡りますけれど、その火は熱くありませんでした。それは紅蓮と、金
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