白半分になぶる。
今も、いい気になって管《くだ》をまき出したのを、にがにがしい思いで聞いていると、ダニはいよいよ乗り気になって、聞かれ果てないことをしゃべり出しました。どことかの後家さんをなぐさんでやって、このごろでは毎晩のように通っているが、はじめは口惜《くや》しがって、おれのつらを引掻《ひっか》きやがったが、今では阿魔《あま》め、おれの行くのを待遠しがっていやがる、そうなってみると、焼杉《やきすぎ》の下駄の一足も買ってやらなきゃあ冥利《みょうり》が悪いから、いくらか貸してくんな、おめえが持っていなけりゃお嬢様におねげえして、いくらか貸してくんなと、声高《こわだか》になる。
何だいべらぼうめ、女をこしらえちゃ悪いのかい、女をこしらえねえような奴は、人間の屑《くず》だい……というような悪口も聞え出す。
浄土の連想も、経文の柔軟も、あったものではない、ダニといわれた船頭の悪口で、すっかりかきまわされる。
お松は、どうしても自分が出なければならないと思いました。こういう際の取扱いは、いつもお松が当ることになっていて、与八ではどうしても納まりのつかないのが例であります。
縫物を押片
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