げることも、廻り込むゆとりもない大の男は、同じような変な身構え――それを言ってみると、身体《からだ》の半分を屈して、眼を皿のようにし、両方の拳をわきの下へ持って来て、そのこぶしをしかと握ったところは、たとえば、柳生流の柔術でいえば、乳の上、乳の下の構えというのに似て、組むためではなく、突くためか、打つためか、或いは払うための構えだと見て取りました。
毛唐《けとう》の社会には、こんな手があるのか知ら。しかし、油断して、タカをくくっていたとは言いながら、あのこぶしの一撃でよろめかされ、二撃で完全に打ち倒されてしまったのだから、白雲が、歯がみをするのも無理はない。
今で考えると、この大の男が取っている身構えは、拳闘をする時の身構えであって、この男は相当に拳闘を心得ていて、自分の危急のあまり、その手で白雲を打ち倒したものだから、決して無茶をやったわけでもなく、力ずくで振り飛ばしたわけでもない。先方はつまり、習い覚えた正当の格によって応戦して来たのを、こちらが無茶に、不用意に、近づいたから不覚を取ったものに違いない。
前にもいう通り、田山白雲は画家に似合わず屈強な体格であり、兼ねて武術のた
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