るには忍びないほどの心持にはなっているらしい。
そこで、彼はいいかげんこの食堂で踊りぬいてから次へ……廊下を渡って一方は主人の室――一方は客の詰所の追分道にかかり、そこで、ちょっと戸惑いをしたようです。
戸惑いをした瞬間には、ああ、これは少し深入りをし過ぎたな、との自省もひらめいたようでしたが、そこはキュラソーの勢いが、一層キュリオシチーのあと押しをして、忽《たちま》ち左に道をえらび、とうとう主人の研究室と、寝室の方へと、無二無三に闖入してしまいました。
それにしても、無用心なことです。駒井のこの住居《すまい》には、このごろ著《いちじる》しく室がふえているはずなのに――金椎《キンツイ》ひとりを眠らせて置いて、みんなどこへ行ったのだろう。少なくとも、田山白雲が来ている以上には、清澄の茂太郎もいなければならぬ、茂太郎がいる以上は、岡本兵部の娘もいるかも知れない――そのほか、それに準じて館山の方からも、造船所方面からも、相当に人の出入りがあるべきはず。それを今日に限って、この異国の、マドロス風の、漂流人らしいウスノロ氏の闖入にまかせて、守護不入の研究室までも荒させようというのは、あまり
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