ほど、その通りです」

         十五

 二人が外出のあと、支那少年の金椎《キンツイ》は、料理場で料理をこしらえておりました。
 その以前は、駒井とほとんど二人暮しでありましたから、台所の仕事も二人前で済みましたけれど、このごろは客がふえましたから、金椎の仕事も多くなったのは当然です。
 君子は庖厨《ほうちゅう》に遠ざかる、と聖人が言いましたが、金椎のこの頃は、庖厨の中で聖書を読むの機会が多くなりました。
 それは金椎自身が、料理は自分の職分と考えていたから、人の少ない時は少ないように、多い時は多いだけの努力をして、この方面には、誰にも手数も心配もかけまいとの覚悟を以て、この城廓の大膳《だいぜん》の大夫《だいぶ》であり、大炊頭《おおいのかみ》を以て自ら任じているらしいのです。
 ことに、人が幾人ふえようとも、先天的に、話相手というものの見出せない不具な少年にとっては、かえってこの台所の城廓が、安住所でもあり、避難所でもあり、事務所でもあり、読書室でもあって、甘んじてここに納まって、職務以外の悠々自適を試みているというわけです。
 とはいえ、その職務に対しても金椎は、また大いな
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