り、衣食のことをです」
「衣食のこと……? それを考えないでおられるものですか、これでも、妻も子もある男ですからね」
 白雲は、まじめに言う。
「要するに衣食のためですね……主人につかえれば、主人より衣食を受くるむくいとして、自分の自由を犠牲にすることもあるでしょう、衣食のために、心ならずも、美術を売り物にするという心苦しさもないではありますまい」
「ありますとも、大ありでさあ」
 白雲の磊落《らいらく》に答えたのが、しおらしく聞える。
「だから、どうも、人間は衣食を土から得ていないと、本当の自由が得られないようです。自由のないところでは、生きた仕事はできませんからね。ところで、その土というものが、今ではみんな大名のものになっていますから、それを耕してみたところで、得るところは大部分、大名に取られてしまい、残るところの極めて僅かな収入で、生きて行かねばならぬ百姓ほど、哀れなものはないでしょう――してみると、大名の所有以外に、耕すべき土地を求めなければならない道理です」
 駒井は、近ごろようやく、深くこの感じを持たせられたと見えて、その言うことが親切です。白雲はそれをも感心して、
「なる
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